なのはな保育園

木の香りただよう育みの輪 園児数:90名

園舎全景

中庭形式の屋外遊戯場を、丸太の列柱がならぶぐるぐる廊下が囲みます。園舎自身が遮音壁となり、敷地外への直接的な音漏れを防ぐので、近隣に気兼ねすることなく、思いっきり外遊びを楽しめます。職員室からも、園全体を視野に収められるので、全体を安心して管理できます。

ぐるぐる廊下

エンドレスの環状廊下で、幅の広いところは3.6m、狭いところは1.5mと幅の変化を持たせてあります。泣き止まない乳児は、保育室からここに出て気分転換。元気が有り余る子は、ぐるぐる回って力を発散。そのほかにも、体操やおやつ、午睡など様々な保育のシーンで、思い思いの目的で、さまざまに利用されています。

1歳児保育室

壁に杉の羽目板を貼った、気の香りあふれる保育室です。天井は、穴の開いた石膏ボードで吸音を図っています。窓は、掃き出しサッシと木格子を併用して、ハイハイの乳児の生活高さに快適な自然風を通す工夫です。

配膳カウンター

調理室内の床を下げて、子どもたちが自分で配膳下膳を行える高さにしたカウンター。調理師と子どもたちとのコミュニケーションがとても取りやすくなりますね。廊下側からも、調理の様子をみることができるおおきな窓がついています。


木の香りただよう育みの輪

保育所木質化の意義は大きいですが、「温かみがあってよい」からと安易に採用できるものではありません。ささくれ・節・反り・割れ等が、こどもたちの怪我の原因となるからです。何よりも安全が優先される保育所で、敢えて木質化を行ったのは、「木」そのものが、自然物の教えとでも言うべき、多様性の理解や生きる力を育むための教材になると考えたからです。園庭を囲む丸太列柱は一本一本違った表情があり、こどもたちにはそれぞれお気に入りの柱があるようです。杉板貼の壁は、お部屋の空気を優しく整えてくれます。「木」が生活の中に溶け込み、こどもたちを柔らかに包み込む園舎を目指しました。


平面計画においては、建物とぐるぐる廊下で四方から園庭を囲む環状配置とし、園庭の音や砂塵、調理室の排気などが敷地外に漏れにくくしたことで、こどもたちが気兼ねなく元気いっぱいに暮らせる園舎となりました。また事務室からはすべての方向を見通せます。


構造的工夫として、大スパンの架構を、大断面集成材や特殊な工法を用いず、120×180 の杉材を中心とした地場の流通材だけで構成するために、重ね透かし梁という伝統的手法を格子形状にして利用した「重ね格子梁屋根工法」を採用し、構造材のうちの50%以上を亀山市産材としました。建築基準法による内装制限で、屋根の格子組をあらわしで見せることは叶いませんでしたが、一般流通材を使った大スパン架構への解答として、一石を投じるものとなったのではないかと考えています。


名称:社会福祉法人里和 なのはな保育園

工事種別:新築

建築場所:三重県亀山市

延床面積:816.71㎡

構造規模:木造 地上1階

園児数:90名

掲載:『建築ジャーナル』 2013年12月号第1219号(保育施設特集)